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マンション建替えか修繕かを判断するためのマニュアル

建替えか修繕・改修かの判断にあたっては、現マンションの老朽度と区分所有者の不満やニーズを把握し、要求する改善水準を設定した上で、それを修繕・改修で実現する場合と建替えにより実現する場合との改善効果と所要費用を比較して判断を行います。
 
□建替えか修繕かの判断のフロー
   
I 老朽度の判定、不満・ニーズの把握と要求改善水準の設定
  I−1.マンションの老朽度の判定
  建替えか修繕・改修かの判断にあたっては、最初のステップとして、当該マンションの老朽度を客観的に判定することが必要となります。なお、建築後相当の年数が経過した中高層を主とするマンションでは、鉄筋コンクリート造(RC造)及び鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)が一般的であるため、このマニュアルでは、構造形式がRC造及びSRC造のものを対象としています。
    (i) 管理組合における簡易判定
      専門家に依頼する前に、一般の区分所有者の方々が、自らのマンションの現状を大まかにでも認識しておくための「簡易判定」を設け、「安全性判定」と「居住性判定」の2つの体系から判定します。
      安全性判定に関する項目は、構造安全性と避難安全性の観点から判定します。いずれの項目も居住者の安全性に関わる重要な項目ですから、「問題ありの可能性がある」に該当する項目が一つでもあれば、「安全上の危険性のおそれがある」ものとして、専門家による詳細判定を受けるようにします。
      一方、居住性判断に関する項目については、躯体及び断熱仕様に規定される居住性や設備の水準の観点から判定します。これらの項目は、安全性のような絶対的な項目ではなく、区分所有者の現マンションに対する不満や改善ニーズにより、その重要性や判定結果が異なることになる相対的な項目であると言えます。このため、専門家による詳細判定を受けるかどうかは、区分所有者の方々の改善ニーズ等に応じて、管理組合において任意に判断します。
    (ii) 専門家による老朽度判定
      専門家による老朽度判定の基本的考え方と具体的な行い方の概要は次のとおりです。
      (1)老朽度判定の基本項目について
      マンションの老朽度判定においては、「構造安全性」「防火・避難安全性」「躯体及び断熱仕様に規定される居住性」「設備の水準」「エレベーターの設置状況」の5つの基本項目を設定します。
      設定した5つの基本項目について、部位や性能の区分からなる細項目(確認項目)を設定し、この各細項目について老朽度判定を行います。
     

1.構造安全性
 (1)耐震性
 (2)構造躯体の材料劣化・構造不具合(コンクリート強度、中性化深さ、基礎の沈下、傾斜等)
 (3)非構造部の材料劣化(仕上げ材料の劣化、金属部の劣化等)

2.防火・避難安全性
  内部延焼に対する防火性(小屋裏及び天井裏の界壁、面積区画、竪穴区画)
  避難経路の安全性(共用階段及び共用廊下の幅員、共用階段の勾配)
  避難経路の安全性(共用階段及び共用廊下の防煙性)
  2方向避難の確保

3.躯体及び断熱仕様に規定される居住性
  1)共用部分:階高、遮音性、バリアフリー性、省エネルギー性
  2)専有部分等:面積のゆとり、バリアフリー性 等

4.設備の水準
  1)共用部分:消防設備、給水設備、排水設備、ガス管、給湯設備、電気設備
  2)専有部分等:給水設備、排水設備、ガス管、給湯設備 等

5.エレベーター(EV)の設置状況

       
      (2)老朽度判定の考え方について
     
老朽度判定は、設定した各細項目について、下表のグレード区分で行います。
       
グレード グレードの意味 対応
グレードA 現状において、構造躯体の劣化や居住性の陳腐化等が生じておらず、問題のないもの 改善の対象項目とする必要はない


I

安全性

現状において、構造躯体等に一定の劣化が生じているもの 管理組合のニーズに応じて改善の対象項目とするかどうかを任意に判断する


B+ やや陳腐化しているもの
B- かなり陳腐化しているもの
グレードC 現状において、構造安全性や防火・避難安全性に問題があるもの 改善を行う必須項目とする
     
「構造安全性」「防火・避難安全性」については、居住者の安全性(人命保護)に関わる項目であるため、グレードA・B・Cの3段階評価とし、グレードCの判定がなされた場合は、必ず改善(修繕・改修)の対象と位置づけるものとします。
     
一方、居住性に関する項目である「躯体及び断熱仕様に規定される居住性」「設備の水準」「エレベーターの設置状況」の各指標については、グレードA・グレードB+・グレードB-の3段階評価とし、グレードCは設けません。建築後それほどの年数が経過していない(新築されて間がない)マンションと比べて、やや陳腐化しているものをグレードB+、かなり陳腐化しているものをグレードB-としています。
         
  I−2 現マンションに対する不満やニーズの把握
  建替えと修繕・改修のどちらが合理的であるかを比較判断するためには、客観的な老朽度の判定に加えて、各区分所有者が現在のマンションに抱いている不満やニーズを的確に把握することが必要です。
         
  I−3.要求改善水準の設定
  当該マンションの客観的な老朽度と各区分所有者が現在の住宅・住環境等に抱いている不満や改善ニーズを踏まえ、当該マンションの水準をどの程度まで改善したいと考えるのか、また、建替えを行うとした場合に期待する住宅の水準をどう考えるのかを検討した上で、建替えや修繕・改修により要求する改善水準(以下、「要求改善水準」という。)を設定します。専門家の協力を得ながら行います。
  この場合、老朽度の判定結果により、グレードCと評価された項目は全て修繕・改修の対象とする必要があります。すなわち、修繕・改修による改善水準の設定に際しては、グレードCの項目は全て問題のない水準への性能の回復・向上を必要とします。グレードBについては、管理組合の改善ニーズ等に応じて、修繕・改修の対象とするかどうかを管理組合が任意に判断するものとします。グレードAについては、基本的に修繕・改修の対象とする必要はありません。
         
         
II 修繕・改修の改善効果の把握と費用算定
  II−1.修繕・改修工事内容の設定
  当該マンションの老朽度の状況と設定した要求改善水準をもとに、修繕・改修工法の有無やその適用可能性、修繕・改修により得られる水準の程度等について、専門家の協力を得て検討し、修繕・改修工事内容を設定します。
         
  II−2.修繕・改修の改善効果の把握
  設定した要求改善水準と、実際に当該マンションにおいて修繕・改修工事で実現することができる水準とには開きがある場合があります。専門家の協力を得て、修繕・改修工事の実施により、どの程度の改善効果が期待できるのかを把握することが大切です。
  I-3で設定した要求改善水準のうち、II-1で修繕・改修の可能性を判断した結果、実現できない項目や改善が十分に図ることができない項目等がある場合は、修繕・改修により実現できない項目として明確に把握しておく必要があります。あわせて、修繕・改修実施後のマンション(躯体)の期待できる残存年数を検討し、設定しておきます。
         
  II−3.修繕・改修費用の算定
  設定した修繕・改修工事の費用を、専門家の協力を得て算定します。
         
         
III 建替えの改善効果の把握と費用算定
  III−1.建替え構想の策定(工事内容の設定)
  建替えの要求改善水準を踏まえつつ、建替え構想を策定し、あわせて概略の工事内容の設定を行います。建替えでは、ほとんどの場合、要求改善水準の全てに対応することが可能であると考えられます。
         
  III−2.建替えの改善効果の把握
  建替えの場合は、修繕・改修とは異なり、基本的には管理組合で設定したマンションの要求改善水準を全て実現することが可能であると考えられますが、利用している容積率が指定容積率を超過している場合など、都市計画・建築規制上の既存不適格マンションである場合は、建替え後のマンションを基本的に適法状態にする必要があるため、各住戸の面積を減少させなければならない場合があるので注意が必要です。
         
  III−3.建替え費用の算定
  建替え工事内容に基づき、専門家の協力を得て、建替え費用を算定します。
         
         
IV 費用対効果に基づく建替えと修繕・改修の総合判断
  最後に、ハイコスト・ハイリターンの建替えとローコスト・ローリターンの修繕・改修のそれぞれの費用対改善効果を総合的に判断して、建替えか修繕・改修かの判断を行います。
   
     
  判断にあたっては、建替えと修繕・改修の改善効果に対する満足度の割合と、改善効果を得るために投じられる建替えと修繕・改修とのそれぞれの場合の単位当たり所要費用の割合と比較して、建替えの修繕・改修に対する優位度を算出し、これを参考指標としながら管理組合でよく話し合って判断します。
   
 
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